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シネマ組踊 孝行の巻

シネマ歌舞伎というものがあっていくつか観たことがある。東京や大阪などでナマの歌舞伎を見ることはよくあったが、しみったれの私は、国立劇場の場合は3階の最後列、歌舞伎座の場合は4階の後ろのブロックなど遠くの席で観ることが多かった。そんな私にとってシネマ歌舞伎は、舞台の至近で玉三郎の「阿古屋」(三味線を弾く場面があったと思う)や仁左衛門の「女殺油地獄」、勘三郎の「め組の喧嘩」などを、スクリーン上ではあるが至近で観られたのはいい経験だった。(残念ながら「ワンピース」など最近のシネマ歌舞伎を観る機会はありません)

今回、「シネマ組踊」が出来たということで早速観に行ってきた。ほんとうは監督やプロデューサーの舞台挨拶も聞きたかったが都合がつかず、桜坂劇場で平日に観た。

大きな画面で観る組踊はとても迫力があった。私は組踊を観る時、舞台全体をながめられる中間の席でなく、あえて最前列で観ることが多い。立ち方(役者さん)を近くで観たいことももちろんあるが、臨場感をたいせつにしたいといったこまっしゃくれた理由もある。シネマ組踊の場合、カメラは舞台上で客席最前列よりもっと近くまで寄る。また角度も前方だけでなく、横、下、上と変化する。このカメラが縦横無尽に動くところには目を見張った。ナマの組踊とは別の体験だった。

さらに、音が大きいことがありがたかった。地謡(演奏者)の音が大迫力だった。老人は目も悪いが耳もよくないのでとても助かる。特に音楽第一で組踊を観ている(というか聴いている)私にとっては、演奏者の声や楽器の音が大きく聴こえることに感激した。撮影も見事だったが、録音も満点だったと思う。

特徴的なのは、最初に解説がついているところである。解説の内容は過不足なく的確で、ちょうどいい長さだったと思う。私が気に入ったのは「組踊」との距離の取り方である。やたら誉めたり誇ったりする解説を聞くことがあるが、この映画の解説は、たとえばストーリーが不自然だとか組踊の変なところも軽く指摘していて好ましかった。ちょうどいい距離の取り方をしていたと思う。

ということで、「シネマ組踊 孝行の巻」は存分に楽しめた。機会があればまた観たいと思う。できることならシネマ歌舞伎のようにシリーズ化してほしい。


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